債務整理の系統
合併に関する法人税は存続法人(合併法人)と消滅法人(被合併法人)にそれぞれ発生する可能性があります(正確にはこのほかに消滅法人の法人株主の法人税がある)。
消滅法人の財産は合併により包括的に存続法人に移転します。
この移転に関して、消滅法人側に資産の含み益(時価が帳簿価額を上回る)がある場合、そこに法人課税問題の源があります。
しかし、この含み益は、合併時に必ず課税される(課税合併)というものではなく、合併法人間の合併方法(含み益の実現方法)の選択によっては課税されない場合(無税合併)もあり注意が必要です。
この点が含み益が必ず課税されてしまう営業譲渡と大きく異なる点であります。
「含み益の実現」からみた合併のタイプ=実際に多くみられる吸収合併について、消滅法人がもっている資産の含み益を合併時に実現させるか否かによって、四つのタイプに合併のパターンが分類されます。
いずれのパターンを選択するかは合併当事者の経済判断となりますが、合併の税問題も重要検討事項です。
消滅法人で課税されるタイプ=消滅法人で含み益を実現(資産評価をアップ)させ、アップ後の純資産額に対応する存続法人の資本金の増加(新株の発行)。
消滅法人でのみ「清算所得」が 発生し法人税が課税される。
存続法人で課税されるタイプ=存続法人は消滅法人の帳簿価額で財産を引き継ぎ、その帳簿価 額の純資産額に対応する存続法人の資本金の増加(新株の発行)。
存続法人で「合併差益」が発生し、評価アップ分(評価差益)に対して法人税が課税される。
双方で部分的に課税されるタイプ=消滅法人で「清算所得」、存続法人で「合 併差益(評価益)」に対して法人税が課税される。
無税合併タイプ=合併比率の決定にあたって、資産の含み益等は合併比率で調整し、消滅法人の財産をすべて帳簿価額で受け入れる。
清算所得も合併差益も発生せず、無税の合併となる。
消滅法人の含み益等が低い場合には、合併比率は一対一ではなく合理的な企業価値の評価に基づいて二対一や三対一等で決定される。
この場合は割り当てる新株が減額されるため合併により増加する資本金がそれだけ減額される。
この減少した資本金相当額は合併差益のうち減資益からなる部分として課税されない。
この方法がもっとも一般に採用されているパターンである。
土地重課等=合併の際に消滅法人の土地等を増額して受け入れた場合に、必ず土地重 の適用があります。
また、上地等の取得日の引き継ぎについては、原則は消滅法人の取得日を引き継ぎますが、土地等が総資産価額の七〇%以上占める会社を吸収合併する場合(合併自体がその土地を取得するのが目的である)、消滅法人の超短期および短期所有の上地の価額を増額した場合はいずれも合併の日を新たな取得日とすることになっています。
このほか、合併による土地の取得には、借入利息のうち一定額を税務上費用と認めない規定(新規土地取得の負債利子損金不算入)が適用されることに留意してください。
繰越欠損金は引き継げない=黒字の会社(存続法人)が、繰越欠損金を有する会社(消滅法人)を吸収合併して、欠損金の繰越控除を使って、黒字会社が本来納めるべき法人税を減らすことができればよいのですが、認められていません(最高裁判例)。
なお、債務超過会社の吸収合併は合併登記が受理されません(土地等の含みがあり実質債務超過でない場合は問題ない)。
資産の含み益を使う=帳簿上は赤字でも土地等の資産の含み益がある場合には、資産の時価の範囲内でアップさせ繰越欠損金を解消し、合併後、評価をアップした土地等の資産を売却すれば実質的に繰越欠損金を引き継がせたことになります。
ただし、土地の評価益については土地重課(プラス住民税)が課税されることに留意してください。
営業権処理の問題=消滅法人に超過収益力を表す営業権がある場合に、存続法人が受け入れた純資産に加えて営業権を計上し、営業権の価額も含めた純資産額に対応して新株式の発行を行うケースがあります(営業権については倒参照)。
この営業権は存続法人で好きなだけ損金処理(任意償却)できることになっています。
ところで、消滅法人に繰越欠損金がある場合に、存続法人がその全部または一部でも営業権として受け入れ、合併後、この営業権を償却し損金処理している場合があります。
この場合は、まず受け入れ資産に含み益がある場合(土地、特許権その他の営業用免許等)には、営業権の金額に達するまで資産の価額をアップし、同時に営業権の金額を減額します。
次に営業権の妥当性について吟味して、妥当性がある金額までは認められます。
それでも営業権に残額がある場合には税務上は認められません。
さかさ合併を使う=欠損会社が黒字会社を吸収合併する形式をとると、「繰越欠損金」の引き継ぎの問題は起こりません。
また欠損金会社が含み益のある土地を所有している場合、土地重課税や新規土地の負債利子不算入の規定を避けたいことがあって、欠損金会社を存続法人にしたいケースもあります。
しかし、こうした合併は通常ではありません。
そこで、これを「さかさ合併」と呼びます。
税務当局は、実質課税を原則とする以上、こうした通常でない合併には、「合理的理由」(真に合併したい理由=たとえば株式額面切り換えや事業吸収)があるはずと考え、単に税金逃れだけを目的としたさかさ合併は認めていません(同族会社の行為計算の否認を適用)。
つまり欠損金繰越控除が適用できないことになります。
これまでの国税不服審判所や地方裁判所などの解釈を参考にすると、次の点がポイントとなりそうです。
休眠会社を合併するのは問題あり=休眠会社がもっている免許などの法律的権利を利用するなどの理由がないかぎり、休眠会社を存続会社とすることは認め難いとしています。
合併後に黒字会社の事業のみを続けるのは不自然=吸収合併する前とその後で事業継続の実態 があることが必要です。
したがって、同業種間の合併はさかさ合併であっても問題が少ないといえます。
一般に子会社同士の合併は問題が少ないといわれている=親会社が業績の悪い子会社を整理するのに、別の子会社と合併させることは実際にみられることで、仮に、合併のいくつかの決定要素の一つに節税があっても不自然とはいえないでしょう。
合併は法的手続が面倒なことと、被合併法人の法的な債務をすべて継承するリスク(簿外債務)を抱えることや、従業員をそのまま継承することから、必要な営業のみを譲渡する営業譲渡が利用されるケースが多く見られます(ただし、営業譲渡で商号も続用すると債務の引き継ぎの問題あり)。
公表では合併といっても実際には営業譲渡しているケースもあるくらいです。
ただし、譲渡資産に含み益(時価が簿価より高い)がある場合、営業譲渡によって譲渡益が発生し課税される問題があることから、合併を選択するケースもあります。
ここでは営業譲渡で常に問題となる「営業権」についての法人税の取扱いを概説します。
営業権の評価=営業権を少し難しく説明すると「他の企業を上回る企業収益を稼得することができる無形の財産価値」(最高裁判例)となります。
つまり営業権は、金銭を支払っても、それ以上に今後収益をもたらしてくれる「超過収益力」です。
この超過収益力は、登録や免許など法律的裏づけをもっている場合や、地理的条件や会社の伝統、優良得意先、ノウハウといった法律的裏づけのない場合もあります。
具体的な売買価額は、実際の取引事例や当事者の個別事情などで決まりますが、将来の収益の見積もり計算を前提とする「超過収益力」の評価に客観性をもたせるのは難問といえます。
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